成田は2005年から飲食店を経営し、2013年からは買い物支援の移動スーパー事業を行っています。移動スーパー事業の際に、玄関先までお伺いすることで、利用者の生活実態を目の当たりにしてきました。玄関が襖の家屋。ペットボトルや食料品のゴミの山に囲まれた生活をする利用者。財布はサプリメントが入っていた包装紙。ゴミが自宅中を覆っているので、自宅で布団に入る際にも靴を脱がない生活をする者・・・。利用者の生活の実態を目の当たりにした毎日から、成田は「販売ではない方法」で、生活困窮者に食品を届けられないかと考えるようになりました。
2017年5月。とあるウェブニュースが目に止まりました。オーストラリアの慈善団体OzHarvestが食品ロスによる食品を品揃えした無料スーパーOzHarvest Marketを開始した、という記事でした。‘Take what you need, Give if you can.’ 「必要なものを取ってください。できるなら与えてください。」とも訳されるこの言葉をモットーに運営されているこのマーケットでは、品揃えされた食品はすべて無料であり、お金は支払える人が支払う仕組みとなっていました。成田はこのマーケットの取り組みから、食品ロス削減とその有効活用による、生活困窮者や買い物困難者に対する食品の寄付活動を開始することを決断しました。
活動を開始する際、世界で行われている二つの活動を参考にしました。ひとつは、オーストラリアのOzHarvestが行っているフードレスキュー。冷蔵食品や野菜、パンなどをスーパーマーケットやホテルなどから受け取り、新鮮な状態で直接、それを必要としている支援団体にお届けする取り組みです。もうひとつは、ドイツのFoodSharingと呼ばれる市民活動。提携しているレストランやカフェなどに、1日数十人が食品を引き取りに行き、それを希望する者が消費することで、食品ロス削減を実現する活動です。
これらをまとめて、「倉庫を持たないフードバンク」と位置付け、2018年3月9日に任意団体「フード・シェアリング・ジャパン」として、活動を開始しました。